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■宇宙巡光艦ノースポール

第6章.太陽
補足-1 宇宙の人々

 ライラさんの部屋では、ライラさんと小杉さんが食事をしていました。

 キノコのソテーを食べていたライラさんが、何か思い出したようです。

「そういえば、お兄様からのメールに書いてあったんだけど、エンタープライズのクルーの間で日本のテレビ番組が流行っているらしいの。」

 ライラさんのお兄さん。ダニエルさんですね。

「F43のパイロットの?」

 F43というのは現在もアメリカ海軍と空軍に配備が進められている最新の戦闘機ですね。で、ダニエルさんは、空母エンタープライズの艦載機として配備されているF43のパイロットなんです。

■図-1 参考: アメリカ空軍F35
参考: アメリカ空軍F35

 ノースポールがニューヨークを発進して大西洋上を飛行した時に護衛として付いてくれたF43の編隊の1機がダニエルさんの乗る機体だったんです。それで、ダニエルさんはF43をノースポールのブリッジに接近させて、ライラさんに見送りのメッセージを送るんですね。

 壁掛け型のディスプレイにライラさんがメニューから選択した番組のタイトルが表示されました。

■図-2 宇宙ジュンサー リュウ&レイ
個室のディスプレイ

「何、これ・・・、『宇宙ジュンサー リュウ&レイ』って、アニメなの?」
「ううん。トクサツって言うの? ほら、小杉の好きな、何とかライダーみたいな。」
「いや、あの、僕はアニメオタクでも、特撮オタクでもないから。仮面ライダーは見てたけど、特別好きとかじゃないし。」

 いやいやいや、何しろ、小杉さんは、仮面ライダーの着ぐるみのスーツを着て、仮面ライダーショーの舞台で、大勢の子供達を前にして、ショッカーと戦った経験の持ち主ですから。もう、十分に、特撮の世界の方ではないかと。

「どうする、他のにする?」
「うーん、でもまあ、せっかくだから見てみようか。」
「じゃあ、再生、と。」

 ライラさん、リモコンを置くと小杉さんの右腕を掴んで、右肩に頭を預けました。

 オープニングの主題歌をバックに、映像も流れます。

「ふーん、やっぱり、変身するやつなんだね。そうか、リュウ&レイって、男女のペアの主人公なんだ。」

 さすが特撮ソング=トクソン。オープニングで流れる背景の画面を見るだけで、作品の世界が理解できるんですね。

 曲の後半、小杉さん、画面に表示された、あるテロップに気が付きました。

「あっ、これって道場の先輩達のチームだ。」

 表示されたのは、特撮のアクションシーンに参加しているチームの名前です。同じ道場の方ということは、もしも、ノースポールに乗っていなかったら、小杉さんもこうやって特撮番組の出演者として参加していたのかもしれないですね。

「出演者って言っても、まず、顔は映らないけどね。」

 そうですね。主人公のライダーはもちろんですが、敵の戦闘員と言えども、何か仮面のようなものを被ったりしますからね。アクションしている本人の顔が映ることはないでしょう。

「あっ、小杉、ビール飲む?」

 ライラさん、小杉さんのビールが空なのに気付きました。

「うん、もらってもいい?」
「いいわよ。」

 小杉さん、おつまみのサイコロステーキを1つとりました。確か、北海道和牛のステーキですね。もちろん、宇宙亭の人気メニューのひとつです。

 主題歌が終わって、番組が始まっていました。

「ここって、東京国際フォーラムの辺りかな?」

 主人公の一人、リュウが、敵の怪人と思われる男を追跡してるんですね。敵の名は『バンカー』。銀河系のあちこちで悪事を働く犯罪シンジケートという設定なのだそうです。その、バンカーが繰り出した怪人は、もちろん、人間の姿に化けていて、スーツを着てアタッシュケースを持って、黒い帽子も被っています。サラリーマンのつもりなのでしょうか。あからさまに怪しい感じですが。

『うっ!』

 リュウが素早くしゃがみ込むと、テーブルの影に隠れました。

『気付かれたかな・・・。』

 リュウが、そっと顔を出して男の動きを確認しました。男はそのまま歩いて行きました。リュウもテーブルの影から出て、追跡を再開します。

 と、突然!

 一瞬、男が立ち止まったかと思うと、右手の方向に走り去ったのです。

『何?!』

 リュウも急いで男が走り出した地点に行きます。交通量も多い道路です。男の走り去った右の方向を探しますが、姿はありません。

『レイ、すまない、目標を見失った。そっちでわかるか?』

 レイというのは、リュウの相棒の女性のようです。おっ、宇宙空間ですね。この2人組のヒーロー、地球の周回軌道上に、機動母艦を持っているようです。その機動母艦の中でレイと思われる女性が端末を叩いてます。

『こちらレイ。こっちも、ロストしたわ。検索してるから待って。』
『了解。待機する。』

「ねえ、小杉って、柔道や空手って、いつから習ってるの?」

 突然、ライラさんが聞きました。小杉さん、一口飲もうとして持ち上げたビールの缶を降ろしました。

「柔道は小学校3年の時かな。」
「へー、早いのね。何で始めたの?」
「良く覚えてないけど、確か、その年にオリンピックがあったんだよな。それで、近所の道場の人が出ていて、銀メダルを取ったんだよ。」

 それはすごいですね。小杉さんが小学校3年というと2036年。この年のオリンピックはですねー、えっと、エジプトとかドイツ、インドも名乗りを上げていたんですね。最終的に決まった開催地は・・・、秘密です。ほら、未来の情報を知ると、タイムパラドクスになって大変ですから。ははっ!

「へー、銀メダルってことは2番てこと?」
「えっと、その出場した階級ではね。」

 おお、すごいですね。確かに、そのオリンピックでは、日本選手の活躍が目立ったようです。

「ふーん。それに刺激されて始めたの?」
「うん。その人が銀メダルを取って、それで、僕の住んでいた地域で、柔道を習うのが流行ったんだよ。」

 ありがちなことなんでしょうね。確かに、自分の知っている人が優勝とか、メダルを取ったりしたら気分的にも盛り上がります。

「ふーん。じゃあ、空手はいつから?」
「空手はねえ、少し遅いかな。中学1年の時だと思うよ。」
「きっかけは?」
「なんかねー、クラスの奴から、柔道と空手ってどっちが強いんだ、みたいなこと言われてさ。本当はそんなこと比較すること自体おかしいんだけど、なんか悔しくてさ。だったら、空手も習えばいいんだって思って。」

 さすが小杉さん。恐ろしくポジティブな発想ですね。普通なら、『何言うんだよ、』とか、いって、ケンカになるパターンでしょうか。

「へー。確かに違う種目だものね。比較するのは私もおかしいと思う。でも、それで、両方とも極めたんでしょ? すごいのね。」
「まあ、極めたかどうかは分からないけど、どっちも頑張ってるよ。」

 ちなみに、小杉さんは、柔道も空手も師範の資格を持っているんです。師範となるためには、柔道では6段、空手では7段以上の段位が必要なのだそうです。小杉さんて、実は、凄いんです。

「おっ、見つけたのか。」

 番組を見ていた小杉さんが声をあげました。

『リュウ、見つけたわ。今の場所から西に0.93の地点よ。』
『よし、急行する。』
『私も行くわ。』
『頼む!』

「おー、なんか、盛り上がってきた。」

 そう言いながら、小杉さん、メンチカツを食べ始めました。ライラさんもパスタを食べています。茄子とベーコンのトマトソースパスタですね。私も大好きです。

 緑の多い公園を走り抜けたリュウは、開けた場所に出ました。

『0.93て、この辺りのはず。』

 小杉さん、ていうか、みんな見覚えのある場所です。

「ここ、日比谷の野音じゃん。ここで撮ったのか。」
「ライブやるところね。私も行ったことあるわ。」

『出てこいっ、バンカー!』

 無人の野音に主人公リュウの声が響きます。

と、その時。

『さっキから、チョコマカと付イテくル奴。誰だカ知らンが始末シてやル!』

 たどたどしい日本語です。怪人は人間のことばを十分に話すことが出来ない設定だそうです。

「よし、始まった!」

おっと、ステージの影から戦闘員がわさわさと出て来ました。

『ヤーッ、』
『ヤーッ、』
『ヤーッ、』

 なんか、微妙な叫び声を上げながら、主人公リュウの周囲を囲みます。

『やってしまえっ!』
『よーし、来いっ!』

 囲まれたリュウも、むしろ、やる気満々です。

『ヤーッ、』
『とぉーっ!』

 さすが主人公。鋭いパンチにキックが次々と炸裂して、敵の戦闘員を突き飛ばしていきます。

「おっ、今の突き、いいねえ。おー、いまやられた奴の受け身もいいねえ。さすが、先輩達のチームだ。」

 はははっ、小杉さんてば、なんか、普通の人と見るところが違うんですね。

『ヤーッ、』
『ヤーッ、』

 あっ、僅かに隙を見せたリュウの背後から戦闘員が近づきます。

『おっ、しまった、』

 あっ、リュウが羽交い締めにされてしまいました。ここぞとばかりに、戦闘員がパンチやキックを浴びせます。

『よーシ、ヨし、いイゾお、お前等。トどメはオレ様が刺しテやル。』

 それまで、戦いを見守っていた怪人が、巨大な剣を持って近づいてきました。そしてリュウの前まで来るとその剣を構えます。

『フッフッフッフッ、死ネいッ!』

 あっ、剣を大きく振りかぶりました。そして、振り下ろします。

『ダァーー・・・、』

 しかし、激しい爆発が起きて巨大な剣が宙を舞って吹き飛びました。

『な、ナ、何事だァ!』
『ヤーッ、』
『ヤーッ、』

 敵の怪人や戦闘員が辺りを見回します。

 そして。

『あなたたちの好き勝手にはさせないわよ!』

 響く、女性の声。観客席最上段に、人影が現れました。

「そうそう、このタイミングだよね。ヒーローってこうじゃないと。」
「相方の女性ヒーローね。この2人、付き合ってるのかしら?」
「そ、それは、設定によると思うけど。」

 はははっ、普通はそういう深堀はあまりしないと思うのですが。なんたって、夢の世界ですからね。でも、私も興味あるので調べてみました。えーとですね、設定によると、リュウとレイは銀河機動隊の同期入隊のジュンサーだそうですね。ちなみに『ジュンサー』というのは、銀河機動隊の最前線で活躍するメンバーの職位だそうです。

 も、もしかして、ジュンサー→ジュンサ→巡査?! えっ? 気付くの遅いって?

 あと、実はリュウは地球人で、25年ほど前に犯罪シンジケートの一味が地球に侵入してリュウの家族ごと誘拐した際に、まだ幼かったリュウだけが、当時のジュンサーで、現在の銀河機動隊の長官によって救助されて、その後、機動隊の施設で育てられたのだそうです。うーむ、ありがちな設定かも。

『おっ、レイ! 来てくれたか。』
『間に合ったようね、リュウ。』

 レイと呼ばれた女性、ライフル銃を抱えています。これで、あの怪人を狙撃したんですね。

『よおーしっ!』

 そう叫ぶと、リュウは、羽交い締めにしていた戦闘員を力尽くで跳ね飛ばすと、ジャンプして戦闘員の輪から悠々と脱出、観客席の最上段にいるレイの横に降り立ったのでした。

『よしっ、一気に片付けよう!』
『いいわよっ!』
『よーし、瞬着!』

 主人公が叫ぶと、一瞬、青白い光が2人を包み込んだかと思うと、次の瞬間には、リュウはブルー・シルバー、レイはレッド・シルバーに輝く『メタリカル・アンプリファイド・スーツ』を瞬間装着した姿に変身していたのです。

 瞬間装着。つまり、瞬着なのです。

『お、お前たち、何者だっ?』

 怪人が叫びました。

 2人の輝くヒーローは、それぞれ腕を大きく回して、凜として立つと、バンカーの怪人達を睨みました。そして!

『宇宙ジュンサー、リュウ!』
『アンド、レイ!』

「そーそー、これこれ。これだよ、ヒーローの名乗りシーン。またやりてーーー。」

 はははっ、小杉さんもお気に入り、ヒーローが名乗るシーンですね。

「いや、だって、これを大勢の子供達や、その子供達のお父さんやお母さん達の見ている前でやるんだよ。もう、思いっきり決めてさー。」
「なんか、凄い興奮してない?」
「いや、興奮するも何も、人生でこんなに格好いい自分は、いなかったと思うよ。」

 もう、小杉さんてば、興奮しすぎですよ。

『レイッ、決めるぞっ!』
『了解っ!』

 そういうと2人はジャンプして高く飛び上がると怪人の前に降り立ちました。そして、間を置くことなく、

『ジュンサー・クラッシュ・サンダー!』

 2人同時に、怪人に対して剣を振り下ろしたのでした。

『グォアーーーッ、』

 怪人は断末魔を上げながら、爆発、四散したのでした。

 しかし。

 空に俄に黒い雲が湧き上がったかと思うと、地獄の底から叫ぶような不気味な声が、街中に響き渡ったのでした。

『再び、立ち上がるのだ! 我がしもべよ!』

 雲から目映い光の球が放たれて、爆散した怪人の破片を包み込んだのです。

『グゴァーーーッ!』

 そして、再び怪人の姿が、しかも、巨大な幻影のように現れたのです。

『出でよ、デグレッション・フィールド。』

 再び響き渡る叫び声と共に、空を覆う雲が渦を巻き始めて、巨大な幻影となった怪人と、リュウ、レイの2人も飲み込んでしまったのです。

「そういえばさあ、」
「何かしら?」

 小杉さん、画面を見ながら尋ねました。

「ライラって、なぜパイロットを目指したの?」
「んー、実を言うと、大学4年で就職先を探すまではパイロットなんてこれっぽっちも考えてなかったの。」
「へー。」
「就職先を探してたら、偶然、宇宙ホテルがシャトルのパイロットを募集してるのを見つけて、ライセンスを取るのもサポートしてくれるって書いてあったから、応募したのよね。そしたら、採用されちゃって。」

 へー、意外です。ライラさん、子供の頃からの憧れでパイロットになったのだとばかり思ってました。だって、お兄さんや、ずっと以前のご先祖様もパイロットだったのですから。ライラさんの家系って、軍人の家系と聞いてますが、パイロットの家系でもあるような気がします。

「それで、ライセンスは取れたんだよね?」
「もちろんね。ただ、座学にしても、実技にしても、大変なんてものじゃなかったわ。」
「で、晴れてパイロットになったんだ。」
「もちろん、最初はコパイロットだけどね。」

 コパイロット=副操縦士のことですね。たぶん、普通は、コパイロットとして何年か経験を積んでから、メインのパイロットになるのだと思うのです。

「どのくらいで、メインのパイロットというか、機長になれたの?」
「私は、4回目のフライトからね。」
「えっ、早くない? そんなものなの?」
「うん、まーー、普通の航空機のパイロットの場合は、ステップアップの手順がしっかり決まってるんだけれど、宇宙船のパイロットの場合は、かなり、各企業が自由にパイロットを養成してたのよね。しかも、どこの宇宙ホテルもパイロットは不足していたから、かなりの促成栽培だったというのは否定できないわね。」

 うーん、そんな裏話もあるんですね。

「ふーーん。でも、その短い間でも、ライラの才能は開花したんだよね。」
「まあ、そうなるかしら。ただ、やっとこれからって時に事故が起きたの。ショックなんてもんじゃないわね。」
「でも、そのあと、プロジェクトからオファーを受けるんだよね。」
「ええ。まあ、話としては二つ返事で受けても良かったんだけど、何か怪しいという気持ちが強くて。」
「はははっ、その辺は、僕も同じかな。」

 あちゃー、その件は私にとっても苦い思い出ですね。まあ、小杉さんもライラさんもプロジェクトに参加してもらえたので、結果オーライと言えばそうなのですが。

「おっ、すごい。巨大メカなんか出してるし。」

 リュウの叫び声、

『銀河龍星グラン・ドラゴン!』

 その叫び声がコールシグナルとして、リュウとレイの乗る機動母艦に届くと、艦底部に接続していた円筒形のモジュールが切り離されて発進。飛行しながら変形して巨大な龍型のメカになって、デグレッション・フィールドに突入します。

『頼むぞ! グラン・ドラゴン。』

 リュウが拳を握って叫びます。グラン・ドラゴンは目からレーザー光線を放って敵の巨大怪人を攻撃します。

『グゥヲォーーーッ!』

 顔面をレーザーで焼かれてよろめく巨大怪人に、長い尻尾をぶつけます。怪人は2、3歩後退すると、仰向けに倒れました。

「小杉って、子供の頃は遊んだりしたの? それとも、毎日道場に通っていたとか?」
「いや、道場は週2回くらいだったと思うよ。」
「じゃあ、道場に行かない日は?」
「もちろん、友達と遊んでたよ。」

 へー、柔道と空手の道場に通って、日々、心技体の精進に努めていたのかと思いましたが、普通な面もあったようです。

 どんな遊びをしてたんでしょうね。

「んーー、あんま覚えてないけど、小さい頃は、ヒーローごっことか、あとは、普通にオニごっことか、缶けりとか。」
「オニごっことか缶けりは日本独特よね。私も留学してた時に、日本の文化体験でやったわ。楽しかった。」
「うん、みんなで大勢でも遊べるからね。あと、少し大きくなってからは、野球とかサッカーとかだね。」

 やっぱり、普通の子供の一面もあったんですね。私の通っていた小学校でも男の子は同じ感じで遊んでました。

「そういえば、台風が来てて外が大雨の日に、家のある商店街のアーケードの中でサッカーして遊んだことがあってさ。」
「うん、それで、」
「友達がボールを思いきり蹴ったら、化粧品屋さんのショーウインドーに当たって、バラバラに割れちゃってさ、」

 えーーー、そんなことして大丈夫だったのでしょうか。

「うん、凄い音がして割れたんだよね。警備システムのサイレンも鳴っちゃって。」
「それで、」
「商店街の人達に、すっっっごい怒られてさ。それ以来、アーケードの中では遊んではいけないことになっちゃったんだ。」

 あちゃー、小杉さんの、武勇伝、なのでしょうか。

 おっと。画面では、再び、リュウが叫んでいました。

『よし、とどめだ。グラン・ドラゴン、ショット・フォメーション! コア・タンク発進!』

 またしても、機動母艦にコールシグナルが届き、上甲板後部に搭載されていた、大型の宇宙艇が出撃しました。

『来たぞ、コア・タンク。レイ、行くぞ!』
『了解。』

 2人は、地上すれすれを低空飛行するコア・タンクに飛び乗りました。素早く操縦席に座ります

『コア・タンク、ドッキング。』

 グラン・ドラゴンは既に、砲身形態に変形していました。その後部にコア・タンクをドッキングさせます。

「ライラは子供の頃は何かやってたの?」
「うーん、チアリーダーかな。」
「おお。」
「私、小さい頃はかなり体が弱かったらしくて、風邪を引いて熱を出すことも多かったらしいの。それで、もう少し体力を付けるために運動をした方が良いんじゃないかって話になったらしいの。それで、その頃の私がチアリーダーやりたいって言い始めたらしいのね。」

 チアリーダーって、アメリカでは、日本とは比べものにならないくらい盛んなようですね。世間やマスコミからの注目度も高くて。

「それで、どうだったの?」
「うん、高校に入る頃までやって、結構頑張ったんだけど、辞めちゃったの。」

 あれっ、それはまた、どうしてなのでしょうか。ライラさんてチアリーダーってピッタリな気もしますが。スタイルも良いし。

「練習がとてもきつかったのよね。特に、もともと私は体が弱かったし、ダンスみたいに、体を動かすことも、それほど得意というわけじゃなかったから。」
「えっ、そんな風には感じないけど。むしろ、スポーツは得意なんじゃないの?」

 私も意外です。ライラさんて、体育系の人だとばかり思ってましたが。

 ちなみに、私は運動オンチで、運動会の徒競走とかいつもビリ独走。ダンスもみんなの動きと全然会わなくて、私だけ、かなり省略した特別版の振り付けだったりしました。はははっ、出来れば触れたくない子供の頃の想い出ですね。

 それで、ライラさん、チアリーダーを辞めてからどうしたのでしょうか。

「んー、チアをやめてから、普通のジムに通っていて、そこで、水泳はかなり頑張ったのね。だから、小杉ともいい勝負が出来たの。」
「はははっ、やったねー、そういえば。」

 わぁーっ、そんなことがあったんですかあ? 今度調べて、みなさんにお伝えせねば。

「ノースポールにもプールがあればいいのにね。」
「あっ、それいいねー。今度艦長に相談してみようかな。」

 なんて話してる間に、リュウとレイの戦いも大詰めみたいですよ。

 敵の巨大怪人は立ち上がってこちらに接近しつつありました。

『エネルギーチャージ、完了したわ。』
『ターゲット・ロックオン完了。』

 迫る巨大怪人。リュウは引き金に指を掛けています。

『グラン・バースト・キャノン、発射!』

 砲口から目映い光の束が発射されました。

『グガガゥワアーーー・・・。』

 最初一瞬だけ光線を受け止めた怪人も、次の瞬間には光の束に押し包まれるように消滅しました。

 こうして、バンカーの野望は、2人のジュンサーの活躍により、今日もまた打ち砕かれたのでした。

『バンカーの野望がこの宇宙から消えるその日まで、戦え、リュウ、守れ、レイ。宇宙ジュンサー リュウ&レイ! つづく。』

「小杉、思いっきり、はまってなかった?」
「んー、確かに、どんどん引き込まれる感じだったよね。」
「なんか、小杉が盛り上がってるの見てたら、お兄様もこんな感じで盛り上がってるのかなって想像しちゃって、とってもおかしかったの。」

 お聞きしたところ、お兄さんのダニエルさんは、沈着冷静で、普段は感情の起伏をあまり出さない方なのだそうですね。

「アクションも派手で決まってたし、これならアメリカ人にも受けるかもね。」
「んー、実際、お兄様の乗ってる船では、かなり流行ってるそうよ。」

 というわけで、日本のアニメと特撮は、今や、世界中の人々を楽しませているのでした。

 もしかしたら、異星人の人達が日本のアニメや特撮を楽しむ日も来るのでしょうか。

 いや、きっと来ます!

 必ず来ます!

 その日が来るまで、

 進め、ノースポール!

 行け、ノースポール!

 発進だ! みんなの、ノースポール!!

 ・・・、なんちゃって。

 それで、

 えっと、お2人には、もう少し、番組の感想とか、子供の頃のこととかお聞きしたいんですが・・・って、

 あれーーーーーっ?

 お2人とも、また、ベッドの中で・・・。

 やだあーーー。

 ・・・でも、いいなーって感じですねーーー。

 まあ、仕方がありません。これで、ライラさんが精神的に癒されて、元のライラさんに戻って、ノースポールの操縦席に戻ってきてくれると願いましょう。

 じゃあ、私も撤収しようかな。

 それでは、また、お会いしましょう。
 みなさまと、星の海で。

■図-3 水星を巡るノースポール
水星を巡るノースポール


(つづく)

2023/10/14
はとばみなと

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■素材参照情報
(図-1)
・photoAC
https://www.photo-ac.com/
(図-3)
・Solar Textures
https://www.solarsystemscope.com/textures/
■更新履歴
2022/10/14 登録